ちょっとした悪夢を見て目覚める。
もうすぐ本番なのにセリフが覚えられないという夢をめちゃくちゃよく見る。
今回の私のセリフはとても長かった。浴衣を着ていた。客席には大事な人がたくさん来ていて、恥をかくことが決定していた。舞台上で共演者にこっそり見せられるように手のひらに「セリフを覚えてないので、アドリブでいきます」とマジックで書く。残りわずかな時間しかないがギリギリまで台本を食い入るように見る。せめて冒頭のきっかけと喋り終わりの言葉だけでも覚えたい。でも全然読めない。頭に入ってこない。なぜならば夢だから。夢で目を凝らしても細かい文字は読めないようになっている。
へんな夢の余韻でふらつきながら台所に立ち、一瞬も迷うことなくミニトマトのアーリオオーリオを作る。刺激が欲しくてとうがらしを5本。バジルを摘みに30秒庭に出たら、家の中から「ままー!!どこだーーーーー!!!」と叫ぶ声が聞こえる。パスタは辛くしすぎた。
義理の両親が中国に帰るための飛行機がコロナの影響で欠航になった。
こまったもんだ。でも水際対策としてはしっかりしているなあと思う。
他の便を探す。上海行きは3日に一度陽性者が出ている。
義両親がワクチンを打ってそろそろ3か月。もう抗体値は下がって来ているだろう。抗体値が下がったとしても予防効果はかなり高いけれど、ブレイクスルー感染も増えている。
どんな選択をしても命がけの賭けになってしまう。
夫の咳はまだ続いている。唾液で検査できるキット(とうぜん自費、通算4回目)で調べて見たら陰性だった。精度はあんまり高くないらしいけれど。咳以外は元気そう。
最近買ったゆるくてかわいい猫の便箋で手紙を2通書く。消せないペンだから緊張感がある。1時間半もかかった。手紙を書くというのも立派な休日の過ごし方だと、最近になってやっと思えるようになった。時間の中にちゃんととどまることのできるような行為は、生活の中で本当に限られている。
散歩に行くとどこかで畑焼きをしてるのかずっと煙たかった。3歳がガードレールを触る、アスファルトを触る、人の畑の土をわしづかみにする、そしてそのまま指を舐めたり鼻をほじったり目をこすったりする。時はコロナ禍、このムーブがどうしても恐ろしすぎる。「だめだよ!」「さわらないよ!」「ストップ!」を各60回ずつ言って帰宅。怒ってばっかりで申し訳ないし自己嫌悪がすごい。寝かしつけ時に「お散歩の時はごめんよ……」と言ってみるも、この発言自体のエゴもすごい。
夕方まで暑かった。これが残暑か。作業に適さない気温だけど、8月中に植えたい苗があったので急いで畑仕事をする。初めてブロッコリーとキャベツを植えた。めちゃくちゃ虫に食べられるらしいのでガーゼで保護する。暗くなると大きい虫がどんどん出てきて逃げるそぶりもない。「お、まだ人間いたんか」と言われてる気がしてそそくさと家に入る。
音声ガイド作業を5分ぶんだけ進める。上半期に体に叩き込んだルールをほとんど忘れてしまっている。8月中に終わらせたいから9月まだこないでほしい。
そういえばパラリンピックには耳が聴こえない人が参加していない、というのを今更知った。ろう者のための大会はデフリンピックと言って、パラリンピックより古い歴史を持っているらしい。
SNSで沖縄のお婆さんが、戦時中にお米と交換で受け取った着物を親族の人に返したい、と話している動画が流れてきた。
「この着物を見るたびに、読谷の人々の顔を思い出して 戦争中にあんなに苦しんで生活していたことを思い出して 戦争は二度とあってはならないという気持ちがあって いつもこの着物を眺めながら 涙を流したこともあるんですけど」
よく周りの人と、おかしいと思ってもいろんなことを止められないこの社会を見ると、日本における戦争でも本当にこの力が働いていたんだろうねと話す。やめたほうがいいに決まってるじゃん、って大多数の人が思っても止められないこと。竹やり意味ない!って言えない雰囲気。30年以上生きてきて、いまがいちばん戦時中を想像できる。
「戦争は二度とあってはならない」という言葉は子どもの頃からずっと聞いて来たけれど、武器を持ってはいけない、殺しあってはいけない、みたいなふうに聞こえることが多かった。もちろんその通りだけど、それはいささか、しがない一市民である私には現実味のない教訓に思えた。もちろん市民が武器を持つのだって一瞬なんだろうけど、持たないし。殺さないし。とか思っていた。
しかし「戦争は二度とあってはならない」のもうひとつの内容は、また人間があんなふうに生きてはいけない、ということでもある。尊厳を奪われ、安心して眠れず、食べ物に困り路頭に迷う生活。これは生活ではない。戦う戦わない以前に、どんな理由があったとしてもこんな風になってはだめ、先人はそういう願いもたっぷり残したはずだ。そしていまこんな状況はすぐそばにある。国同士で戦うことさえしなければOK、ではない。ありえない状況はいつも、ありえそうな顔でしれっとやってくる。
今日の東京の感染者数は3581人。先週に比べてずっと減少しているけれど、検査数も減っている。今日の東京の検査数は大阪の半分だった。
渋谷の予約なし会場の若者向けワクチン接種が抽選になった。しおりが倍率7倍と教えてくれた。命に直結する抽選。命を抽選にしないで。
(もちろん先着にしろって意味じゃない。こんなシステムにしないための分かれ道はいままで無数にあった)
