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shiori

たまたま側にいる人

7時50分起床。目覚ましをかけるのを忘れていた。

今日は一日雨らしい。寒そうだからという理由で、厚手の部屋着とジーンズで出勤することをOKとする。クルミとレーズンのパン切れをカバンに詰め込み、家を出る。

8時10分。体操着の中学生、黄色い帽子をかぶった小学生の兄弟、台車を押す運送業者の人とエレベーターを相乗りする。

沖縄の一部の小中学校は、来週から臨時休講。

寝坊したけど、いつもより数分早い電車に乗れて安心する。あれ、父の日って明日だっけ、と今度はいきなり父の日に間に合うか焦り始める。


乗り換えに便利な先頭車両は、9時まで女性専用車両。

高校生の頃、始発に近い駅から乗る女性専用車両はこわかった。異性に見える人が一人でもいたほうが、平和な空間が保たれると思った。今利用している電車に、あの恐怖は感じなくていい。

乗り換えの駅まで、山崎ナオコーラ「かわいい夫」を読む。

昨夜、寝る前に読んだ「たまたま側にいる人」というタイトルのエッセイが素晴らしかった。

ふらりと書店に入り、偶然手にした本を読むことと、「たまたま側にいる人を愛す」ということは、似ているのではないか、ということについて。

結婚とは、世界で一番自分に合う人を探すことだと著者は思っていた。

でも、夫と出会って、著者の考えは変わった。

たまたま側にいる人を、自分がどこまで愛せるか。ただ、側にいてくれる人を愛し抜きたいと思うようになる。

評価されている本を読まなくていい。

たまたま出会った本を、自分なりの読み方で深く読むこと。そのほうがずっと素敵な読書だと。

これは歴史実践の話だと思って読んだ。

出会い方、かかわり方、やがては歴史となる人や出来事との関係性の捉え方の話。


45分の昼休み。

人気の味噌煮込みうどんのお店へ、今日は雨で空いていることを期待して向かう。予想は当たり、カウンターの席に案内される。

味噌煮込みうどんを目指して来たのに、夏季メニューの自家製麺ジャージャーきしめんに惹かれ、きしめんを注文する。パスモで支払いができず、同僚に1000円札を借りる。

コンビニのATMでお金をおろす。220円もとられる。倍近い手数料の値上がり、いつの間に?!

お礼にコーヒーでも買おうかと思ったけど、220円でコーヒー2杯買えたと思うと悔しくなり、何も買わずにコンビニを出る。


退勤後、図書館でリクエストの本を2冊受け取る。

風が強い。傘がひっくり返る。髪が伸びて、今すぐにでも切りたい。

帰宅前に美容院へ駆け込むか、駅へ向かいながら悩む。でも一日中つけているマスクを一刻も早く外したい。映画編集も待っている。まっすぐ帰る。

駅のホームへ降りる階段で、高齢の女性が手摺りにつかまりながらゆっくりと階段を降りている。

たくさん荷物を抱えていた女性の腕から、傘が落ちた。

後ろにいた私は傘を拾い、女性の腕にかけた。「まあご親切に、どうもありがとう」と御礼を言われたが、私は自分のために拾った。

おととい、銀座駅のエスカレーターで目撃するかもしれなかった事故を見なくて済んだのは、運が本当によかっただけだった。

自分が事故現場を見たくないから、ビニール傘を拾う。

私は、たまたま側にいる人。


マンションの郵便ポストを確認してから、花壇のカシワバアジサイを見にいく。

6日前に花壇の主役だったカシワバアジサイの隣で、蕾だった百合の花が開花していた。

ご飯が炊けるのを待ちながら、3月からスーダンに、5月からメキシコ勤務になった友人ふたりに元気かと連絡をしてみる。こちらの近況として、アジサイと百合の写真を送る。

スーダンの友人は、砂漠の中にいるから、花の写真に癒されると言った。

メキシコにいるはずの友人は、いろいろな手続きが遅延して、まだ日本にいた。


みなみの家族にヤムウンセンが好評で、食卓が東南アジアの屋台になったと聞いてうれしい

土葬を願う気持ち、私もある。火葬場に行く回数が増えるたび、その思いは強くなる。

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