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別れの中秋節


あす義理の両親が帰国するので、昼も夜もごちそうをたっぷり作った。


スペアリブ、5種きのこスープ、キャベツアンチョビ炒め、いか大根、棒棒鶏、合鴨パプリカ炒め、レンコン塩きんぴら、エビ小松菜オイスター炒め……食べきれないとわかっていても、別れの日はいつもできるだけたくさん作る。

中秋節で餡がぎっしり詰まった月餅も食べなきゃいけないから慌ただしかった。


いつもの別れと違う。次いつ会えるのかまったくわからない。中国がこんなに遠い場所になるとは。健康、仕事、お金、教育、ワクチンなど考慮すべきさまざまな項目のなかで、絶妙なバランスの上に今の生活がある。ずっとこの状態ではいられないことだけがはっきりとわかる。


夜、月を見ようと家を一歩出た瞬間に猫と目があったのでラッキーだった。月は、名月名月とハードルを上げすぎて思ったより小さく見えた。でも、力強い明るさを感じた。この世界が全部入っている袋に開いた小さな穴から、外の光が差し込んでいるような。アリの巣の奥深くから入り口を見つめているみたいな。


夜はヴァーチャル空間でのトークイベント。

スクリーンに大衆居酒屋のつくねと生ビールの写真を写して、アバター姿のみんなでそれを眺めているのがシュールだった。近未来SFで幸福の定義が大衆居酒屋だったシーン。

結局、思い出や記憶がいちばんの肴であり、なにもそれは酒を飲んでいる時に限らず、そのまま世界の味わい方とも言える。


月餅の中に入っている塩味の卵の黄身が苦手。

でも鴨血のようにいつか好物になるかも。



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